お友達と喧嘩したときに、あなたならどうする?
別のお友達に仲裁をしてもらうのはいい手かもしれないわね。
けど仲裁に来たお友達が自分に都合のいいことを言ってくれなかったとしても、怒るのはちょっとかっこ悪いわね。
ともかくそんなお話が、神話の時代にもあったらしいの。
さて、今日も一緒に神話を紐解いていきましょう。
神話5
「『天戦』によって光天使と闇天使が凄惨に争う姿を見て、創造神アヴルールはとても悲しみ、世界をお見捨てになられた。
光天使と闇天使とは別にアヴルールの従順な神使であった「神龍・リィン・リーアン」はアヴルールの悲しみを知り、争いを止めようとした。
神龍・リィン・リーアンは世界の規律を守ってきたもので、唯一「色」から生まれた生物だった。色は光の中でも闇の中でも五大元素のなかでも唯一「色」であり、永久の中立を保っている。
だが、神龍リィン・リーアンは光と闇の陣営をうまく仲裁できず、逆に両陣営からとがめられ、殺されてしまった」
長く続く『天戦』に人々は傷つき、ついにはこの世を御創りになられたアヴルールさえ世界に嫌気がさして、お見捨てになられてしまうわ(おお、アヴルールの御慈悲が再び世界に満ちんことを)
ただ、このお話を自分のどうしようもない子供たちが喧嘩しているのを見て、父親がそれを見捨てた、のように考えてしまってはアヴルールに対する大いなる誤解を招くことになるかもしれない。
創造神が世界をお見捨てになった。では、お見捨てになる前の世界はどのようなものだったのかしら?
わたしたちはそれを知らなければならないの。なぜって、そうしなければアヴルールの御心に沿った世界がどうであるか、その世界に向かうためにはどうするかを知ることはできないからよ。
目的地がなければ人の歩みはむなしい。自分たちがどこから来たのか知っている人だけが来た道を戻って暖かな家に帰ることができるわ。
そうはいっても途方もないアヴルールの御心がわたし達に正確に理解できるとは思えないわね。
けれど思い出してみて?わたし達自身が神の被造物、という大きな大きな手掛かりをわたし達は自分の中に持っている。もちろんわたし達自身は神ではないしそうなることもできないわ。(おお、いと高きアヴルールのみが至高にして唯一の神なり)
川から汲み取った水が、川そのものだということはできないわね。そう考えるのは馬鹿者だけよ。
でも、ある川から汲み取った水が、その川の要素を反映している、とは言えるわ。
だからそうね、自分たちの心に聞いてみるのはどうかしら?
わたし達は絶対神アズの息吹から生まれた。創造神アヴルールがお造りになった生物の子孫なんですから。すこしはもとの川の様子がわかるかもしれないわ。
わたしたちにとって本当に望む状態、真に満足する状態はどんなときでしょう。
それはもしかしたら、天秤の針がどちらにも触れず、平衡を保っているような、そんな「均衡」と「調和」がとれた状態だったかもしれないわね。
どうして創造神様は光天使と闇天使を御創りになったのかしら?
どうして創造神様は一つだけでなく5つも元素を御創りになったのかしら?
それはすべてが循環と調和の中で、平衡を保つためだとも考えられるわ。
なら、どちらが美しい、どちらが優れている、という考えで争うこと自体がアヴルールのお気に召さなかったのは当然の事ね。
そうやって「天戦」ですべての調和が乱されたとき、「色」から創られた神使、神龍リィン・リーアンが均衡を保つために行動したの。
リィン・リーアンはその中立な性質から天秤と言われることもあるわ。まさに彼は神の御心である「調和」の守護者なのよ。
「アブルールの悲しみを知る」といわれるのもこの所以ね。
前にお話した神話を思い出してみて?
世界は「色」によって識別することを覚えた。「色」はあれとこれ、そっちとあっちを初めて認識させてくれたの。「識別」ということを初めてわたし達に教えてくれたのは「色」とその守護者たる神龍リィン・リーアンよ。
アヴルールは「色」を作り終えて、絶対神アズはその出来に満足なされた。
「色」は絶対神様の御心にかなうほどの美しさを世界に与えた、いわば世界のマスターピースなの。だからその守護者たる神龍は神使のなかでも特に強い力を持っていたと考えることもできるわ。
色はすべての元素の中でも色たりえた。だから中立であることができたのね。
でもその強さをも光と闇の陣営は許さなかった。
光と闇、どっちの陣営にもつかないその態度をとがめられて、神龍は光天使と闇天使達によってたかって殺されてしまうの!
じつはこのことはアザルス大陸では民話や吟遊詩人たちのお話になっていたるところに伝わっているわ。
その一説を紹介するわね。私の住む町にいたある吟遊詩人の歌からよ。頼み込んで無料で歌ってもらったの。これも大切なフィールドワークね。
ちょっと、陰惨な歌でごめんなさい。背景はお祭り騒ぎなのにね。
ご丁寧にどうやって神龍を殺したかも詳しく伝わっているわ。
同様のお話は冒険地「黄龍の神殿」でも見ることができるわよ。 歴戦の冒険者諸兄なら一度は足を踏み入れたことのある場所よね。
この歌でも神龍は『天秤』と言われているわね。彼の龍の中立と調和を司る性質をよく言い表した呼び名と言えるでしょう。
天秤が自分たちに都合のいいようにふれないから殺してしまった・・・なんだか勝手な言いぐさのように感じるのは私だけかしら。もし、この世に本当の悪があるとすれば、それは意図的に天秤を乱す力なのかもしれないわね。
・・・やめましょうか、ちょっと変な方向に話がそれてしまったわ。
ともかく光と闇の陣営はこうやって寄ってたかって神龍をやっつけてしまったの。
この神龍のやっつけられ方についても本来は神話歴史学的観点から注釈をつけたいところなのだけれど、今回はお話が長くなりすぎてしまったので別の機会に譲りましょう。
世界は創造神の愛に続いて調和の守護者をも失った。
さあ、これからどうなるのでしょう。
この世界にアヴルールの御名のご加護あれ、あなたとわたしに調和が訪れますように。
Original Posted Date: Oct. 24th, 2014
Author: Unsinkable Sammy