Lecture of Wizardry Online Mythology 7.1の楔「名前を食らうもの」 Lect 07. The 1st Shard
- Those Who Eat Names -

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こんばんは、わたしの名前はサミーよ。

いきなり何?と思うかもしれないわね。今日のお話は名前のお話なの。

わたしにも、あなたにも名前があるわよね。あなたが冒険者に登録する書類に一番初めに書いたのもあなたの名前だったはずよ。

そうでなければ、あなたは BP〇〇の誰か、としか言えないわ。

もし名前がなくなってしまったらどうする?

それは本当にあなたでいられるのかしら。

さて、それでは今日も一緒に神話を紐解いていきましょうか。

神話6

「神龍リィン・リーアンは光天使を闇天使を仲裁できず、逆に光と闇の陣営に殺されてしまった。

神龍リィン・リーアンは殺されるとき、体中に10のくさびを打ち込まれた。

最初のくさびは左手にうちこまれた。

双子の魚は名を食らい、それによって神龍リィン・リーアンは名を失った。」

いままでずいぶん長い神話を見てきたわね。

神様が世界を創って、そして生き物が生まれ、その生き物と神様の神使たちが争う。

これから神話は終わりに近づいていくわ。

神話の終わるとき、わたし達の歴史と呼ばれる時代が始まるの。

だから、これからはもうすこし細かく神話を見ていくことにするわね。

同時に少し難しい話も入れていくわ。もちろん反論異論は大歓迎よ。もしご意見がある方はアカシックレコードの端末からコメントを頂戴ね。

さて

それで、神龍が殺されるときに体中に10のくさびをうたれることになるの。

この前聞いた吟遊詩人さんも歌の中でそういっていたわね。

吟遊詩人の歌の一節

かすがいというのはコの字型のくさびの事よ。

でもなぜ剣で切ったり槍で突いたりして神龍を殺さなかったのかしら。

それは第一に神龍が超神話的存在であるために通常の方法では到底殺せないということ、それになにより神龍の本質が「均衡」を守るということだったためよ。

神龍のような宇宙神話的生物(あえて生物というわ)はわたし達のような肉体を持っていない。実際神龍がどんな姿だったのか詳しいことは何一つ伝わっていないわ。それは巨大だったり小さかったり、男だったり女だったりしたらしいの。

だから宇宙神話的生物はその本質しか存在しないともいえる。神龍リィン・リーアン の場合はすべての元素の中にある「色」から生まれ、万物の均衡を守るというのが彼の本質だったのよ。

均衡とは何かしら?

それは天秤で言えば、針の部分に秘密があるわ。均衡であるということは揺れる針が同じ幅だけ左右に振れているということでもあるの。永遠の循環こそ神話世界の均衡だから。静止してしまえばそれは均衡だとはいわないわ。静止は死そのものなの。

だから均衡そのものである神龍を殺すためのマジックアイテムは「かすがい」=「くさび」になる。くさびをうたれた針は2度と振れることがないから。誰が入れ知恵したかわからないけども、憎らしいほど的確な武器よね。

でもさすがは神龍、1本や2本のくさびを打ち込まれたところで死にはしないわ。

だからなんと10ものくさびをうたれてしまうの。

はじめのくさびは左手にうたれるわ。このお話は黄龍の神殿でも聞けるわよ。わたしの調査した石碑の文面を載せるわね。

石碑の文面

つぎに「双子の魚は~~」と神話は続いているわね。

これはなんの事かしら。実はこのことは神話の世界の秘密の知識がないと解けない謎なの。

じつは、神龍に打ち込まれたくさびはそれぞれ異なる形の魔法の武器だったといわれているのよ。

はじめに左手にうちこまれた「1のくさび」は別名「名を食らうもの」

それは双子の魚の形をした魚の置物だといわれているわ。

右の魚の口に向かって名を告げるとそのものは消滅し、

左の魚の口に向かって名を告げるとそのものは再び生まれるといわれている。

魚、というのは海の中水の中にいるわ。それはわたし達が伺いしれぬ深淵しんえんの彼方にいるといってもいい。深淵しんえんは生をもたらし、また死ぬとあらゆるものが帰っていく場所でもあるわ。

2匹の向かい合う魚は「死と再生」を象徴している。命は異界の彼方から生まれ、異界の彼方に消えていくということね。

そしてこの魔法の武器によって奪われたのは、肉体よりも魂よりも大切なもの。「名前」よ。

絶対神アズが "AZ" であるのは始まりと終わりをその名の中に持つ神様だから。神格にとって名を奪われることほど恐ろしいことはないわ。

神龍リィン・リーアンはまず初めにその名を奪われた。

名を奪われるということは支配されてしまうということなの。わたしがわたしでなくなる、あなたがあなたでなくなれば、だれかが自由に名前を付けることができるわ。

そうすれば、名付けたものの通りの存在になってしまう。

名前は強力な魔法そのものなの。「綴り」が "spell" であることと同じようにね。

さて、それでは今日はここまで。

アヴルールの御名に栄光あれ、あなたとわたしの名前がいつまでも続きますように。

Original Posted Date: Oct. 29th, 2014
Author: Unsinkable Sammy

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