Lecture of Wizardry Online Mythology 9.3の楔「内なる矛盾」 Lect 09. The 3rd Shard
- Inherent Contradiction -

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何事にも終わりがあるわ。

どんなに素晴らしい本にも、終章があり、最後の1ページをめくるときがくる。

どんな楽しいお祭りも、かがり火を消すときがくる。

もしかしたら、夜空に瞬く星々にも終わりがあるのかもしれないわね。

でもそれは悲しいことではないの。むしろとても大切なこと。

終わりを理解することは、賢者の智慧と同じくらい大切な事よ。

豊穣な穀物は、実っても刈り取られなければ意味はないのだから。

今日は、そういうお話。

さて、それでは一緒に神話を紐解いていきましょうか。

神話8

「神龍リィン・リーアンは殺されるとき、体中に10の楔を打ち込まれた。

3つ目のくさびは左腕に打ち込まれた。

呪われた水瓶は、内なる矛盾を生み出した。

それによって神龍リィン・リーアンは矛と盾を持てぬようになった。」

第三の楔

3つめのくさびは左腕にうたれた水瓶とされているわ。

この水瓶は永遠に枯れることのないのだとか。あら、便利ね。いつも水不足で水が高値でとりひきされているわたしの地元、レーヴァンアンタイルではさぞやもてはやされるアイテムでしょう。

水瓶、というものは水をためておくためにあるものよ。

水は形のないエネルギーそのもの。わたし達の体もその大部分は水でできているという錬金術師たちもいる。そういう意味ではわたし達の体は生命の水を受け止めて溜めておく水瓶と言えるかもしれないわ。

神話歴史学の碩学大家たちの間では、3つ目のくさびが封じた神龍の本質は、彼の神話魔法的形勢力そのものだったといわれているわ。

神龍は二つ目のくさびで「角」にあらわされる生起し、驀進ばくしんする魔法的推進力を封じられ、続いて、「水瓶」その受け皿になる本質まで封じられたということね。

本来形のない水は、とうとうと流れているときは永遠の循環の中にいる。でも水瓶に受け止められ溜められたその時から、水は一時的に循環を離れてある程度形を決められてしまうの。さらにずっと溜めっぱなしにしていたのなら、水瓶の中の水は腐ってしまうこともあるわ。

永遠であるためには、それは使えない状態でいなければならない。何かがわたし達にとって有用な形あるものになった瞬間、そのものの永遠の働きは失われるわ。矛盾、ともいえるわね。

自由なものに形を与えるということ、形を与えられたものはその瞬間から死に始めるけれど、湧き出る水を便利に使おうと思ったらやっぱり水瓶に水を溜めておかなくてはならないわね。

終わりを知るということは、ある形において役割を果たす力を十分に得ることでもあるの。

「汝、死を恐れることなかれ。されど、死を忘れることなかれ」

Memento mori(メメント・モリ)という言葉をご存じかしら。真・大人の社交場で「メメント・モリ」という曲を聴くことができるわ。

わたし達は死すべき定めにある、だからそれを忘れずそして恐れずにに楽しく生きよ。という意味がある警句よ。

まさに水瓶が与えるのはその言葉が表す通り。死にゆく定めを理解したものだけが限りある生を存分に活かすことができるということね。

でもこの3つ目のくさび「内なる矛盾」という水瓶は呪われた水瓶なの。中からは永遠に水がわき出てくるのですもの。その魔法の水を飲めば不死になるというけれど、不老にはならない。それを飲んだものは永遠に生きながら朽ち果てる肉体を取り換え続けなければならないらしいの。

それを飲んだ人にはかわいそうな話だけれど、何者も肉体の内にあっては永遠不滅であろうとするのはおこがましい事なのね。(おお、真に永遠を生きるはアヴルールただおひとりなり。)

水瓶は水の力を規定するための道具。しかしそのうちに無限の水を抱えるならそれは矛盾、つまり道理が通らないということよね。

水は生命にとっては豊穣の力そのものよ。あらゆる恵みと安らぎが水の中から生まれてくる。水瓶はそれを受け止める魔法のアイテムなのね。水に形を与え、有用な着地点となるのよ。

でも、わたちたちは限りを知らなければならないの。汲み取った水は使われていつか枯れることを。わたしたちの魂はおおいなる循環の中に戻らなければならないことを。

そうしなければ、遅かれ早かれ、ウォーカー達が永遠の時の彼方から大鎌を手に代価を求めてやってくるわ。その時、時は優しくはない。

彼らは有限という均衡を崩すものを許しはしないの。

メメントモリ。すべてが限りあることに感謝しましょう。そして限りを知ることを忘れないで。

アヴルールの御名を讃えて。あなたとわたしが限りある生を大切にできますように。

Original Posted Date: Nov. 9th, 2014
Author: Unsinkable Sammy

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